海外市場は、日本の中小メーカーにとって大きな成長チャンスです。 しかし、「何から始めればいいのか分からない」「海外の規制や商習慣が不安」という声も多く聞かれます。 本コラムでは、販路開拓支援を行うSOLID Globalの経験をもとに、輸出を成功に導くための基本ステップを、2回に分けてわかりやすくご紹介します。 第1回では、輸出を始める前の【準備フェーズ】にフォーカスします。
はじめに:海外市場への挑戦がもたらすメリット
世界市場は日本の約70倍。小さな商品でも海外では大きなチャンスがあります。
- 世界市場は大きなチャンス 日本の人口1億2千万に対し、世界には約82億人の市場規模があります。国内ではニッチな商品でも海外には大きな需要が存在します。
- 円安で輸出は追い風 近年の円安傾向により日本製品の海外価格が割安になり、競争力が向上しています。この為替環境は中小企業の輸出拡大に有利に働きます。
- グローバルな需要拡大 世界の貿易量は堅調に回復しつつあり、WTO予測では2025年もアジアを中心に約4%以上の成長が見込まれています。海外市場の成長を取り込むことで売上拡大が期待できます。
- 「メイド・イン・ジャパン」の信頼 日本製品は品質の高さで世界的に評価・信頼されており、小さなメーカーの製品でも「日本製」であること自体が海外バイヤーへの強みになります。
- 小規模でも始められる ネット販売や専門機関の支援を活用すれば、従業員が少ない企業でも低コストで海外輸出に取り組むことが可能です。今こそ一歩を踏み出す好機です。

海外輸出の基本ステップ(全体像)
- 市場リサーチ – 売れる国・地域はどこか、現地ニーズを調査
- 商品選定・適応 – 輸出する商品とアピールポイントを決定し、必要な規格対応確認
- 規制確認と手続準備 – 輸出国・相手国の法規制や必要書類を事前にチェック
- 販路開拓(バイヤー探し) – パートナー企業や顧客を見つけ、商談の機会を創出
- 商談・契約と決済 – 価格や納期を交渉し契約締結。代金回収方法(支払い条件)を決定
- 物流・輸送 – 出荷の準備と輸送手配、通関手続きを実施し商品を出荷
- アフターフォロー – 納品後のフォローや継続取引に向けた関係構築

ステップ1:市場リサーチとターゲット選定
GoogleキーワードプランナーやJETRO、ECサイトでの調査で市場ニーズを探ります。
- どの国に売るかを検討 自社製品に適した市場を見極めます。「どの国・地域に需要があるのか?」を考え、候補を絞り込みましょう。
- オンライン調査の活用 Googleキーワードプランナーで現地の検索トレンドを調べる、競合企業のサイトやECプラットフォーム(eBay、Alibabaなど)で人気商品・価格帯を分析すると、市場ニーズが見えてきます。無料のオンラインツールだけでも十分にデータ収集が可能です。
- オフライン情報源の活用 JETRO(日本貿易振興機構)の国別情報や海外市場ミニ調査サービス、各国大使館の商務部、取引銀行の海外情報なども参考になります。必要に応じて専門の調査会社に依頼する方法もあります。
- 競合と顧客ニーズ分析 現地で既に流通している競合製品や代替品を調べ、価格帯や販売チャネルを把握します。その国ならではの嗜好やニーズ(デザインの好み、サイズ規格など)があれば仮説を立てておきます。

ステップ2:商品選定と現地適応
現地で好まれるデザインや規格に合わせて商品を微調整し、「買いたい理由」が伝わる資料を用意しましょう。
- 輸出する商品と売り込みポイントの決定 選んだターゲット市場に対して、どの商品で勝負するかを決めます。その商品の海外向けの「ウリ」は何か、どの特徴を前面に出すかを明確に考えましょう。
- 現地ニーズへの適合 ターゲット国で好まれるデザインや仕様に合うよう商品を調整できないか検討します。例えばパッケージ表示を現地語にする、電圧・サイズなど規格を現地標準に合わせる、現地で人気の色やスタイルを取り入れる等の工夫です。相手国の「好まれる傾向」を理解し、それに沿った訴求ポイントを決めることが重要です。
- 商品資料の準備 海外バイヤーに商品の魅力が伝わる資料(カタログやプレゼン資料)を用意します。ただ翻訳しただけでなく、「なぜその商品を買うべきか」を相手の立場で考え、メリットが伝わる内容にします。製品仕様や強みだけでなく、日本からの引渡し条件(例:FOB価格やMOQ〈最小発注数量〉)も明記しておくと商談がスムーズです。
- 価格戦略の検討 現地の物価や競合価格を踏まえ、採算の合う現地販売価格をシミュレーションします。その上で逆算して輸出価格(自社の希望売価)を設定しましょう。現地の税金・関税や流通コストも考慮し、魅力的かつ利益の出る価格帯を探ります。

ステップ3:法規制・輸出入手続きの確認
日本と輸出先の両方の規制を確認し、必要書類の準備を進めます。
- 輸出先国の規制調査 ターゲット国で対象商品に輸入規制がないか確認します。禁輸品や許可制品でないか、必要な認証(電気製品なら現地安全規格、食品なら成分規制や検疫など)があるかを把握しましょう。JETROの各国の規制情報ページが有用ですし、より正確には現地のバイヤー等に確認してもらう方法もあります。
- 日本国内の輸出規制確認 日本から輸出する際に必要な手続きがないか確認します。例えば、戦略物資等に該当すれば経済産業省の輸出許可(安全保障輸出管理)が必要です。また文化財や動植物など特定品目の輸出規制にも注意します。
- 貿易実務手続きの理解 輸出には様々な書類と手続きが伴います。インボイス(商業送り状)、パッキングリスト、輸出許可申告書など基本書類の準備と作成方法を把握しましょう。フォワーダー(貨物運送業者)や通関業者とも連携し、不備なく通関できる体制を整えます。
- 規制遵守の重要性 法規制をおろそかにすると、大きな損失や信用失墜につながります。各国の法律に沿った対応を事前に調べ、必要な場合は専門家に相談して確実にクリアすることが大切です。

 
		 
                             
                             
                             
                             
                            
